

マラケシュで、タンジェから同行していた日本人のS君は、スペイン人と約束があるからと言って、列車でカザに戻っていった。
マラケシュに何泊かした後、弟が住んでいるタルダントに行くことにした。タルダントはモロッコを横断している、アトラス山脈の南側にあり、かなりの僻地だそうである。そこに赴任するまでは、大西洋に面したアガディールという町に住んでいた。海に面したアガディールは、一度大震災にあい、建物が崩壊したために、今ではきれいでモダンな町になっているらしいが、そこから約60k東の内陸部に入るとかなりローカルなもようである。
マラケシュからタルダントに行くには、西に進んで、海沿いの快適な道を行くコースと、南に下がりもろにアトラス山脈を越える旧道があるという。
もちろん私のために弟は、アトラス越えを選んでくれた。

アトラス越えはかなりの難所続きだった。舗装は無くなり、ダート走行の好きな人なら泣いて喜びそうな道が延々70kmも続いた。途中こんなところでと思うような場所にレストランがあり、そこで昼食をとった。ブルーの色が好きなのか、モロッコの田舎ではたいてい上の写真の様な壁が多かった。(上中レストランで食事を作ってくれた少年・右アトラスの峠の茶屋)
このレストランで生まれて初めてモロッコ定食「タジン」を食べた。
とんがり帽子の様なふたをした、土鍋に羊の肉や野菜を煮込んだものが入っている。この食べ方にもルールがあり、まず、パンをちぎって中の汁にひたして食べ、汁気が無くなってから、肉に手をつける。もちろん手づかみである。最後に「ハリラ」という味けの無いスープを飲んだが、このスープだけはなじめなかった。
道はますます険しくなり、石ころだらけのがたがた道になった。峠の茶店で休憩をとったが、こんなところで商売が成り立つのだろうか。後で地図を見ると標高は2000mを越えていた。峠から南下すると、急に雲がかかり、あたりは全く霧に包まれ、視界がきかなくなった。ようやく霧も晴れ、陽が傾く頃、道は平地になり、弟の家のあるタルダントの町に到着した。
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